ほかの年であれば、チタン製のヨットマスター 42がロレックス偽物のショーの話題をかっさらっていたことだろう。ただ今年はそんなYMが霞んでしまうほど、このブランドにはクレイジーなリリースが多かった。それでも重要なのは、その理由だ。
そして今、5カ月足らずのあいだに、RLXチタン(グレード5チタン)をケースに用いたロレックスの時計がふたつ発売された。1本は昨年、防水記録を新たに更新した直径50mmのメガダイバーズウォッチ、ディープシー スペシャルだ。そして今回は残りの1本、ディープシー スペシャルとは異なり普通の人でも着用できるサイズとなったヨットマスター 42を紹介しよう。
これは大変なことだ。しかしシースルーバックを採用したデイトナに、絵文字の入ったデイデイト、金無垢のGMTマスターII、そしてまったく新しいドレスウォッチコレクションと並べると、チタン製のヨットマスターには目立った動きが起きていない。ウィルスドルフ一族がもたらしたこの48時間は、いかに騒乱の時間だったことだろう。
ある意味では、そこまで興奮しないのがふさわしい対応だとも思っている。現時点でベゼルと文字盤にマルチカラーを使った手頃な価格のシチズンから、このあいだの日曜日に発表されたジャン-クロード・ビバーによる50万ドル(日本円で約6580万円)のミニッツリピーター トゥールビヨンまで、ほかの天下の時計メーカーがチタンでできた腕時計を作っているのだから。
一般的な愛好家がすぐに小売店で手に入れることはできないため、167万900円(税込)という価格はあまり重要ではない。しかし新しいヨットマスター 42はただリリースされただけではない。チタンのコンセプトの実証を超えるものである。この魅力的な素材を使った今後の実験の可能性を予感させるような、そんな身につけられる逸品であるのだ。